

女性の足はなぜむくむ?
1日1ケアですっきり足へ
女性の足はなぜむくむ?
1日1ケアですっきり足へ
2025.04.07
女性の足の悩みで多い“むくみ”。いつものことだと放って置いたらさまざまな症状を引き起こす危険性が!? 歩いている時、なんとなくむくみや疲労感などの違和感があったら黄信号。“動ける=足も健康”と思い込んでしまうが、他のパーツと同様に足も月日とともに変調するもの。今回は下北沢病院理事長/皮膚科 久道勝也先生が、女性に起こりやすい足の不調のメカニズムと、快適に歩くのに役立つエクササイズを分かりやすく解説! 原因と対策を知って、いつまでも健康的な一歩を大切にしよう。
女性の足のむくみの原因は2大変革期が関係している?

妊娠による悪影響は出産後に残ることも
ホルモンバランスの変化により体調に“ゆらぎ”が生じるが、それは足や歩行動作にも言えること。足を専門とする下北沢病院の久道勝也先生は語る。
「特に女性にとってホルモンバランスが大きく変わるのが、妊娠・出産の時期と、更年期から閉経期にかけてです。この二つの時期は、足や歩行機能を含めた生理に大きな変革をもたらします。そこには、男性にはない女性特有の足のトラブルも見られます」。
「妊娠による影響は主に三つです。
一つは胎児により腹部が圧迫されることで静脈に大きな負荷がかかり、その結果、足周りの血流が滞りやすく、むくみや下肢静脈瘤などのリスクが高まります。
また妊娠初期から出産後2か月までリラキシンというホルモンが多く分泌されることで、足を含めた全身の関節や靭帯、腱がゆるみ、それに体重増加も相まって、足のアーチが沈みやすくなるほか、足を動かす起点となる骨盤もゆるんで歩行にも悪影響が出てしまいます。
さらに、胎児が大きくなるにつれて重心の位置がずれることで、歩行中の姿勢がくずれやすくなり、足にも今まで経験のない負荷がかかるのですが、それらの影響は、妊娠中に避けられない体重増加によって拍車がかかり、それでいて“病院に行くほどでもないから”と適切なケアがなされず、出産後も不調が残ってしまう…というケースも多いです」。
マイナートラブルが増えてくる更年期
「もう一つ、足の健康にとって大きな変革期となりうるのが更年期以降です。
更年期に差し掛かると女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量がアップダウンをくりかえしつつ全体として急速に低下していきます。それに伴い、皮膚については更年期に入り最初の5年でコラーゲンが30%減るほか、水分保持や角質のバリア機能に関わるエラスチンも低下。これらの変調により、皮膚の防御力が低下して水虫や細菌が侵入しやすくなります。
またエストロゲンが減少することで関節や腱の柔軟性が下がり、外反母趾や扁平足など変形がいっそう進み、さらに、エストロゲンは脂肪にも影響を与えるため、足裏の蹴り出す場所に備わりクッションのような働きをする脂肪が、本来の位置からズレたり萎縮することもあります。結果、足の骨が床にダイレクトに当たることで痛みが出る症例も多いです」。
「また高齢者の64%が足のむくみに悩んでいるというデータもあります。足がむくむ原因はさまざまですが、圧倒的に多いのはふくらはぎの筋力の低下によりポンプ機能が十分使われていないことで起きる特発性浮腫です。足にそういう症状が見られても病院に行くという判断をする人は少ないですが、実はリスクが高いです」。
放っておくとどんな症状が出てしまう?
「たかがむくみだし」と見て見ぬふりをすることが足の健康にとって足かせになることもある。
「ふくらはぎのポンプ機能が十分に働かないのはなぜか。たとえばハイヒールを履く習慣がある人は、長時間つま先立ちの状態で、ふくらはぎの腓腹筋やアキレス腱が固く縮まり、腓腹筋の柔軟性が損なわれているケースが多いです。あとはエストロゲンの減少による関節や腱の柔軟性低下も、やはり血流循環不全の一因。ポンプが十分に働かないとまずむくみますが、それを放置すれば下肢静脈瘤となり、血流がうっ滞することでうっ滞性皮膚炎や下腿潰瘍になることもあります」。
ホルモンバランスの崩れによって、あらゆるトラブルが起こりうる女性の足。ちょっとした異変に気づいたら専門医を受診し、普段から足の状態に意識を向けることが大切。
「歩行習慣の有無は、健康寿命やメンタルヘルス、認知機能にまで影響することがわかっています。つまり足や歩行の健康が損なわれると人生の質も下がりかねない。足の不調から全身の健康のトラブルの早期発見ができます。これを見落とさないよう、日頃からセルフチェックをしてみてください」。
今すぐできる足のむくみチェック3つ

□昨日履いていた靴がキツく感じる
□靴下を脱いだ後、ゴム部分の跡がしばらく経っても残っている
□ふくらはぎを指で押して5〜10秒でその部分が戻ってこない
すべてチェックがついたら要注意!慢性的な症状にならないよう、早めの対策を心がけて
1日1ケアで健康的な足へ
むくみ軽減!簡単エクササイズ3選
お気に入りの靴を履いて気持ちよく歩くには、土台となる足を整えてこそ。歩行に必要な筋力や柔軟性を養い、足にかかる負担を最小限にするのに有効なエクササイズを3つご紹介。動画を見ながら、寝ながら、すきま時間にやってみよう。

まずはここから!2分でできる
「ふくらはぎ伸ばし」
1. 床に腰をおろし、右足だけあぐらをかく体勢に。背筋はまっすぐのばします。
2. 用意したタオルを左足のつま先にひっかけて、両端を持ちます。
3. 反動をつけずにタオルで足を手前に引っ張ります。息を止めないのがポイント。右足も同じように行います。
[NG] 膝や背筋が曲がってしまうと、ふくらはぎが十分に伸びないので注意しましょう。

大殿筋を鍛えてヒップアップ効果も!
「お尻上げ運動」
1. あおむけになって寝て、胸の前で腕を組む。左膝は曲げて、右脚は伸ばす。
2. お腹に力を入れてお尻を持ち上げ、右足のつま先は上向きのまま、10秒キープ。上体から脚までが一直線になるようにする。お尻を下ろして、足を替えて同様に行う。

座りっぱなしのデスクワークの方におすすめ!
つま先上げ下げ
座りながらつま先を数回上げ下げするとむくみ解消に。
久道先生の一言アドバイス
「足のケアは健康への近道です」
「体の一番下で全体重を支え、心臓から一番遠い位置にある分血流も滞りやすい足。そのように過酷な環境にさらされる足はエイジングの影響も出やすいです。体の不調はまず足に出る! そんな意識で日々ケアしてほしいです」。
アキレス・ソルボのおすすめシューズをピックアップ!

「C 604」モデル ヌバック/グレー(左)/ヌバック/コーヒー(右)¥22,000(税込)
むくみを感じた時は締め付け感のないクロッグタイプもおすすめ。上質なヌバック革で優しい履き心地です。「メディフラット・アナトミー設計」で足裏の圧力を効果的に分散し、長時間履いても快適な構造になっております。
- 講師
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下北沢病院理事長 / 皮膚科 久道勝也(ひさみち・かつや)
ロート製薬株式会社 CMO(最高医学責任者)、 医療法人社団青泉会下北沢病院 理事長・医師。1964年静岡県生まれ。1993年獨協医科大学卒業。同年に順天堂大学皮膚科入局。2007年ジョンズ・ホプキンス大学客員助教授。2009年よりヤンセンファーマ研究開発本部免疫部門長、アラガン社執行役員などを経て、2014 年よりロート製薬研究開発本部執行役員。2019 年同社チーフメディカルオフィサー、CMO(最高医学責任者)に就任。2016年7月日本初の足病医療の総合病院として下北沢病院を設立。同院の理事長・医師を兼務、現在に至る。主な著書に『死ぬまで歩きたい』(2019年3月/大和書房)、『“歩く力”を落とさない!新しい「足」のトリセツ』(2020年12月/日経 BP)がある。
Illustration:AZUSA
Interview & Text:Nao Kadokami
Edit:Saki Shibata